7 糖尿病用語
1型糖尿病とは
膵臓のβ細胞が破壊してしまうことにより、膵臓からインスリンが出なくなってしまうことにより発症する糖尿病を1型糖尿病といいます。その多くが急激に重症になりやすいという特徴があります。
原因としては、自己免疫性、ウイルス感染、特発性などがありますが、インスリンが体内で作られなくなることから、注射によりインスリンを補充する必要があります。生存していくためには毎日インスリン注射を打つことになります。
発症時期としては子供の頃が多いものの、中高年にも認められることがあります。
2型糖尿病とは
2型糖尿病とは遺伝的原因と過食、肥満、運動不足、ストレス、加齢などの原因が加わることで、インスリンの分泌や働きが低下し、無症状のうちに発症する、という特徴があり、日本人の糖尿病患者の9割程度、つまり大部分が2型糖尿病です。
特に肥満の関与が最も重要とされており、中年以降の糖尿病の予防にはまず「太らない」ことが大切になります。
妊娠糖尿病とは
妊娠糖尿病とは、妊娠に際してみられる糖尿病、耐糖能異常(血糖がやや高めの状態)のことを指し、妊娠以前から糖尿病だった場合とは異なります。
妊娠糖尿病は、後で本当に糖尿病になったり、新生児に合併症が起こりやすくなったり、子供が糖尿病になりやすくなる可能性があるなど、注意する必要が出てくるため、出産後に改めて糖尿病の診断が必要です。
糖尿病性網膜症とは
糖尿病性網膜症とは、糖尿病の三大合併症の一つで、眼底にある網膜の血管が悪くなり、最次第に視力が弱まってきます。さらに血糖値が上がると失明することもあります。白内障になる人も多いといわれます。
日本人の失明原因の第1位がこの「糖尿病性網膜症」といわれています。
糖尿病神経障害とは
糖尿病神経障害は、末梢神経の機能が損傷を受けます。
末梢神経は全身に広がり、感覚神経、運動神経、自律神経がありますが、すべて障害を受ける対象となります。なかでも痛みを感じる感覚神経に障害が現れやすく、手足の咲樹のしびれ、痛みをあまり感じないということが、片方だけでなく、左右ともに現れます。
その他の症状としては、発汗、低血圧、心筋梗塞、便秘、下痢、手足の痺れ、手足の痛み、手足の壊疽、無発汗、排尿障害、インポテンツなど、症状は様々です。
糖尿病腎症とは
糖尿病腎症とは糖尿病の3大合併症のひとつで、 尿を作る腎臓の糸球体という部分の毛細血管に障害が起きる(血液中の老廃物を尿中に排泄するろ過器の働きができなくなる)ことで、腎機能が低下し、尿の中にたんぱくが出てきたり、高血圧やむくみなど腎炎と似た症状がでてきます。
悪化すると腎不全から尿毒症となることから、透析が必要になります。
低血糖とは
高血糖状態が続く糖尿病の治療では、血糖を下げる飲み薬やインスリンを使うわけですが、これが効き過ぎることで血糖が下がり過ぎるのが「低血糖」です。
高い血糖を下げるために薬やインスリンを使うのですが、人が必要とするインスリンは、食べ物や運動量などにより変化します。あまりインスリンを必要としないときに血糖を下げる作用が効き過ぎると、低血糖になってしまいます。
低血糖になるということは、体を動かすためのエネルギー源となるブドウ糖が体のすみずみに運ばれないことになります。
そして、次のような症状が現れます。
発汗、手足のふるえ、動悸、不安感、吐きけ、空腹感、霧視
↓
集中力の低下、脱力、眠気、めまい、疲労感、ろれつが回らない、
物が二重に見える、空腹感、霧視
↓
意識障害
↓
低血糖昏睡
ブドウ糖など甘いものを携帯し、低血糖を感じたら服用し一休みし回復を待つようにしましょう。
糖尿病の病名の由来
糖尿病は古代西洋では“diabetes”(ギリシャ語で高いところから低いところへ水が流れるの意味)と名付けられました。
一方、中国では、「消渇」(水や食べ物が消える、濾過するという意味)と名付けられてました。
日本では江戸時代になると西洋の“diabetes”と言う言葉が伝わりましたが、これを翻訳できなかったため、オランダ語で壁されていた“pisvloed”が“尿崩”と記されたと考えられています。(“pisvloed” pis=尿、vloed=flood洪水、氾濫の意味)
ここが、「糖尿」病の「尿」の語源です。
一方で、17世紀、英国チャールズⅡ世の侍医トーマス・ウイルスが糖尿病患者の尿がはちみつのように甘いことに気付き、ラテン語のはちみつを意味する”mellitus”が付き、“Diabetes Mellitus”と呼ばれるようになりました。
この“Mellitus”が日本にも伝わり、「尿崩」と呼ばれていたものが、「蜜尿病」となり、その後蜜の成分が糖であることがわかり「糖尿病」と呼ばれるようになりました。
明治には「蜜尿病」「糖尿病」が混在していましたが、1907年の日本内科学会講演会後に「糖尿病」に統一されました。
日本糖尿病学会について
日本糖尿病学会の設立は昭和33年4月。糖尿病学の進歩・発展を図り、国民の災害を防止することを目的とした任意団体として設立された。
昭和60年には社団法人 日本糖尿病学会となる。会員数約3,500名。平成19年には創立50周年を迎え、現在会員数は約16,000名を超える。
日本糖尿病学会は、糖尿病の成因と治療に関する学術研究活動を継続し発展させてきたと同時に、糖尿病の治療環境の向上を目ざした活動を行っている。平成元年には、糖尿病治療のための高度な知識と経験を持つ専門の医師の育成をめざし、「糖尿病専門医」認定事業を開始。現在、日本全国に3,700名を超える糖尿病専門医が誕生している。
また、糖尿病の治療環境を向上させ、チーム医療を推進するために、知識と経験が豊富な看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士などのコメディカルスタッフの育成をめざし、当学会、日本糖尿病教育・看護学会及び日本病態栄養学会の3団体が協力し、平成12年に「日本糖尿病療養指導士認定機構」を設立。現在では12,000名を超える日本糖尿病療養指導士が誕生している。
〔日本糖尿病学会の主な活動〕
・糖尿病に関する調査及び研究
・糖尿病に関する学術講演会,討論会及び研究会の開催
・会誌,研究報告,研究資料及び図書の刊行
・海外の関係団体等との連絡調整
・その他本会の目的を達成するために必要な事業
〔年間予算規模〕
6億円から7億円
〔会員になるには〕
以下の①または②を満たすことが入会申請資格の条件である。
①6年制の大学卒業、あるいは大学院修士課程修了に相当する学歴を有すること。
②筆頭者として糖尿病に関する研究発表・論文が1篇以上あること。
年会費1万円で、入会の可否は年2回開催する、定例理事会の審査により決定。
小児糖尿病のタイプについて
小児糖尿病は2つのタイプにわけられます。
1つ目は自己免疫やウイルス感染を原因とした小児糖尿病で、年間の発症頻度は小児10万人に1~2人です。
合併症としては自己免疫疾患(橋本病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)が挙げられます。
遺伝性は低いといわれています。
2つ目は遺伝の疑いが高い小児糖尿病で、年間の発症頻度は小児10万人に4~6人です。
肥満の人の発症が多いものの、肥満でなくても発症します。きちんとした血糖値コントロールをしないと、重い合併症を発症するおそれがあります。
合併症の例としては、成長障害、網膜症、白内障、腎症、腎機能低下、腎不全、神経障害、動脈硬化症、高血圧
壊疽が挙げられます。
足変病
足変病とは糖尿病による合併症の一つです。
糖尿病による神経障害により感覚が鈍くなると、足にけがや火傷などがあっても気付きにくくなり、しかも足先は目につかないために異常がおこっていてもわかりにくくなります。
高血糖になるとばい菌に感染しやすく、傷が治りにくくなることから、、小さな傷でも酷くなり、かいようや壊疽になり、足を切断しなければならなくなることがあります。
そのようにならないためにも、足のチェックを習慣にし、異常を早く発見するようにしましょう。