1 糖尿病とは

糖尿病とは

糖尿病とは、血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用が低下することにより、体内に取り入れられた栄養素がうまく利用されず、血液中のブトウ糖(血糖)が多くなる状態のことです。

この原因は、膵臓からのインスリンの分泌が不足する場合と、栄養素を取りすぎた肥満などにより、インスリンの効果が出にくいの場合、つまりインスリンが有っても血糖値が下がらない場合が有ります。

糖尿病は多くの場合、無症状のまま進行します。糖尿病が進行すると、合併症を引きおこし、深刻な状態になります。合併症には糖尿病性動脈硬化、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症などがあります。

 2006年度における日本の糖尿患者数は約820万人、予備軍は1050万人と推定されています。今後も右肩上がりで増加することが予想されます。



1型糖尿病とは

膵臓のβ細胞が破壊してしまうことにより、膵臓からインスリンが出なくなってしまうことにより発症する糖尿病を1型糖尿病といいます。その多くが急激に重症になりやすいという特徴があります。

原因としては、自己免疫性、ウイルス感染、特発性などがありますが、インスリンが体内で作られなくなることから、注射によりインスリンを補充する必要があります。生存していくためには毎日インスリン注射を打つことになります。

発症時期としては子供の頃が多いものの、中高年にも認められることがあります。



2型糖尿病とは

 2型糖尿病とは遺伝的原因と過食、肥満、運動不足、ストレス、加齢などの原因が加わることで、インスリンの分泌や働きが低下し、無症状のうちに発症する、という特徴があり、日本人の糖尿病患者の9割程度、つまり大部分が2型糖尿病です。

 特に肥満の関与が最も重要とされており、中年以降の糖尿病の予防にはまず「太らない」ことが大切になります。



1型、2型糖尿病以外の特定の機序・疾患による糖尿病

遺伝子の異常による糖尿病

膵臓の手術をした後インスリンが出なくなることによる糖尿病

肝臓や膵臓の病気、感染症や免疫異常による糖尿病

ステロイドホルモンなど薬剤が原因となり発症する糖尿病

                           などがあります。



妊娠糖尿病とは

 妊娠糖尿病とは、妊娠に際してみられる糖尿病、耐糖能異常(血糖がやや高めの状態)のことを指し、妊娠以前から糖尿病だった場合とは異なります。

 妊娠糖尿病は、後で本当に糖尿病になったり、新生児に合併症が起こりやすくなったり、子供が糖尿病になりやすくなる可能性があるなど、注意する必要が出てくるため、出産後に改めて糖尿病の診断が必要です。

 



糖尿病の病名の由来

糖尿病は古代西洋では“diabetes”(ギリシャ語で高いところから低いところへ水が流れるの意味)と名付けられました。

一方、中国では、「消渇」(水や食べ物が消える、濾過するという意味)と名付けられてました。

日本では江戸時代になると西洋の“diabetes”と言う言葉が伝わりましたが、これを翻訳できなかったため、オランダ語で壁されていた“pisvloed”が“尿崩”と記されたと考えられています。(“pisvloed”  pis=尿、vloed=flood洪水、氾濫の意味)

ここが、「糖尿」病の「尿」の語源です。

一方で、17世紀、英国チャールズⅡ世の侍医トーマス・ウイルスが糖尿病患者の尿がはちみつのように甘いことに気付き、ラテン語のはちみつを意味する”mellitus”が付き、“Diabetes Mellitus”と呼ばれるようになりました。

この“Mellitus”が日本にも伝わり、「尿崩」と呼ばれていたものが、「蜜尿病」となり、その後蜜の成分が糖であることがわかり「糖尿病」と呼ばれるようになりました。

明治には「蜜尿病」「糖尿病」が混在していましたが、1907年の日本内科学会講演会後に「糖尿病」に統一されました。



糖尿病の体質を示す遺伝子

糖尿病患者の約95%を占める2型糖尿病。
その発症のしやすさに強く関わる遺伝子を、日本の2つのグループが各々の研究で突き止めて同時に発表しました。
その研究グループは「国立国際医療センター」と「理化学研究所」。
日本人を対象に研究し突き止めたとのことです。

特定した遺伝子の名は「KCNQ1」といい、これまでは、心臓の筋肉の動きに重要であることが知られていました。
この遺伝子の塩基配列がわずかに違うと2型糖尿病の発症が1.3~1.4倍に高まったとのこと。

これまで、2型糖尿病に関連する遺伝子は、欧米人対象の解析によりいくつか見つかっていたものの、アジア人で特定されるのは初めてとのことで、今後は予防や治療法の開発が期待されるようです。



糖尿病は結局○○の病気

糖尿病は血糖値を下げるインスリンなどが正常に分泌されない等、血糖値が高い病気であるわけですが、血糖値が高いことそのものが悪い、というよりも、血糖値が高いことによる○○への影響が悪いことになります。

これにより、○○に関する病が「合併症」というかたちで現れるわけです。

○○とは何ぞや、というと、それは「血管」です。

高血糖だと血液の粘性が強くなります。それにより血管が詰まったり、負荷がかかるのです

この状態が長く続くと、全身の血管に影響を及ぼし、細小血管や大血管の合併症を起こすことになります。糖尿病患者の死因では大血管症、つまり心血管病が最も多く、特に欧米では狭心症、心筋梗塞等の冠動脈疾患による死亡が死因の3~5割です。

日本でもでも脳血管障害とともに大血管症が死因の上位に位置しています。

 

 



気づいたときにはもう遅い!?糖尿病網膜症

日本の中途失明原因の第2位、年間約3000人が糖尿病の合併症の一つ、「糖尿病網膜症」で失明しているといわれます。

この糖尿病網膜症が発症するのは、糖尿病になって5年から10年後とのことですが、病気が進行し重くなるまで自覚症状がなく、気づいたときは手遅れというケースも少なくないとのことです。

この病気は、糖尿病になり血液の粘性が増すことにより、血管の閉塞障害や血液凝固異常が起き、眼内の血管が徐々に詰まることで、網膜に栄養や酸素が届かなくなってしまいます。

すると酸素不足を補おうと、網膜に新しい血管、つまり「新生血管」ができます。しかしこの血管はもろく、少しの刺激で出血することから、ひどくなると網膜剥離を起こして、挙げ句の果てに失明になってしまうのです。

これを防ぐには早いうちから眼科で検診するしかありません。

糖尿病と診断されたら、年に一度は眼科検診を受けるようにしましょう。



糖尿病とストレスは関係が深い

糖尿病予備軍の人のうちで、ストレスのある人の場合、ストレスが無い場合の3倍以上、糖尿病を発症しやすいと岩手医大内科学講座糖尿病代謝内科分野の佐藤譲教授らが発表しました。糖尿病患者や糖尿病予備軍の医療対策への活用が期待されます。

この研究は2000~2005年にかけて、盛岡市内の事業所の男性労働者732人のうち、糖尿病の予備軍男性128人(平均年齢49・3歳)を対象に経過を観察し判明したとのこと。

ストレスは体に悪影響を与えることが多いのは誰しも知っていますが、糖尿病についても同様のことが言えるという研究結果でした。



糖尿病の血糖値

糖尿病になると血糖値はどれだけ上がるのでしょうか。
糖尿病血糖値は、空腹時血糖値ブドウ糖付加後2時間値などで検査し、判断されることになります。
糖尿病の場合の血糖値は以下のとおり。
 1,空腹時血糖値126mg/dl以上
 2,ブドウ糖付加後2時間値では200mg/dl以上

健康な人の場合だと、
 1,空腹時血糖値70mg/dl、食後の血糖値は高くても140mg/dl未満となりますす。

健康な人であれば、70mg/dl~140mg/dlの間で変動しています。



1型糖尿病と2型糖尿病

1型糖尿病(ICD-10:E10)

膵臓のランゲルハンス島でインスリンを分泌しているβ細胞が死滅する病気です。
原因は、主に自分の免疫細胞が自らの膵臓を攻撃するため(自己免疫性)といわれますが、まれに自己免疫反応の証拠のない1型糖尿病もみられます(特発性)。「生活習慣病」的な糖尿病ではありません。患者の多くは10代でこれを発症します。

 2型糖尿病(ICD-10:E11)

インスリン分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病です。
いわゆる「生活習慣病」の糖尿病と言えばこちらを指します。感受性低下(インスリン抵抗性が高い状態)、膵臓のインスリン分泌能低下が主な原因です。遺伝的因子と生活習慣がからみあって発症する生活習慣病で、日本では糖尿病全体の9割を占めます。



日本人は2型糖尿病の発症リスク1.2倍

門脇孝・東京大教授(糖尿病学)の研究チームが「小太り程度でも日本人が欧米人に比べて2型糖尿病を発症しやすくなる」という遺伝子を発見。この遺伝子に変異があると発症の危険性が1.2倍高くなる。早期発見や予防薬開発に役立つと期待されるとのこと。9月5日付の米科学誌ネイチャージェネティクス(電子版)に発表。

2型糖尿病は運動不足や食べ過ぎなど生活習慣がもとの糖尿病で、日本国内の糖尿病患者全体の大半を占めている。
研究チームは、糖尿病患者約4500人と健康な人約3000人の遺伝子を解析。糖尿病と関係のある二つの遺伝子を発見。
このうち、「UBE2E2」と呼ばれる遺伝子では、遺伝子を構成する塩基配列が健康な人と異なると糖尿病の危険が1.2倍高くなると推定。日本人患者の15%がこのタイプと考えられるとのこと。

また、他国の遺伝子データを調べたところ、韓国や香港などでは同様の関係が認められたものの、フランスやデンマークでは糖尿病と関連がなかった。
東洋人は、欧米人のように明白な肥満でなくても発症する人が多く、血糖値を制御するインスリンの分泌量が欧米人の半分しかないことが知られている、今回の遺伝子はインスリンを分泌する細胞内で働いている。